
東京商工リサーチによると、2018年は美容室の倒産件数が過去10年で最大となりました。本来、美容室や理容室は、飲食店や小売店と比較して開業の初期投資が少なく、過剰な在庫負担もないため、「倒産しにくい業態」とされていましたが、それが徐々に変わってきているようです。
この原因は、何なのでしょうか。私たちは、この原因は大きく2つあると考えています。
1つは、「個人消費の減少」です。
これは言うまでもありませんが、お客様の財布のヒモは年々固くなってきています。食料品や日用品、ランチ代など、少しでも節約しようと考えている人が増えています。美容室へ通う頻度を減らしたり、ドラッグストアでホームカラーを買って自宅で染める人も増えています。消費税の増税後は、この流れがさらに大きくなるでしょう。
もう1つは、「業界の寡占化(かせんか)」です。

「寡占化」とは、上位3~5社が、市場をほぼ独占している状態のことをいいます。いわゆる大手企業の台頭による独占です。
私たちはこの「寡占化」がとても重要だと考えておりますので、少し詳しく解説していきます。
この10年くらいで「寡占化」が急速に進みました。例えば、昔からあった街の個人経営の電器店の多くは廃業に追い込まれ、家電量販店(ヤマダ電機、ビッグカメラ、エディオン、ケーズデンキなど)が電器店の市場を独占しています。
コンビニエンスストアは、大手3社(セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート)に淘汰されつつあり、地元のローカルコンビニは殆んどなくなりました。
温かいお弁当を作っていた個人経営の弁当屋さんも、消え去り、大手4社(オリジン弁当、ほっともっと、本家かまどや、ほっかほか亭)に淘汰されています。



また、家具インテリア業界では、ニトリと無印良品の2社で圧倒的なシェアを持っています。
インターネットショッピングでは、Amazon、楽天、Yahooショッピング、の3社で購入するケースが殆んどですし、ネットで購入した商品の配送もほぼ大手3社(クロネコヤマト、佐川急便、日本郵便)が担っています。
こういう例は、様々な業界で起こっており、例を上げれば、きりがありません。
そして、美容業界でも、大手のチェーン店が台頭しつつあります。
EARTH、モッズヘア、TAYA、QBハウス等は、現在も店舗数を拡大しています。
こういう話をすると、『うちのサロンは技術力があるからチェーン店なんかには負けない。』という方がいらっしゃいます。
技術力があるのは、すばらしいことです。しかし、大手の台頭による寡占化は、サロンの技術力に関係なく、別の問題を生み出しているのです。